宮大工と、パン職人~「棟梁」を読んで~

宮大工である小川三夫さんの著書・「棟梁」 を読んで、夫婦ともに、非常に感銘を受けています。
この本は、私達タルマーリーへの、最大の応援歌…そう思います。
いつもは女将の私がブログを更新していますが、今回は久しぶりにオーナーシェフの渡邉格の文章です。↓
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私と妻は、同じ本を読まない。
読んだ本について、お互い自分の解釈を通して相手に伝える。
それを聞いて納得して、同じ本を読まなくてもいいか…と思う。
しかし「これは!」という本については、相手に無理やり読ませる
取り決めたわけではないが、ここ10年ほど、そのようにしてきた
そして昨日、妻から渡された「棟梁」という本をを読んだ。
宮大工の本だ。
職人の心得から親方のあり方まで、仕事を通じて育っていく様。
職人になり立ての時に読んだら、どう思ったか?
独り立ちした時に読んだら、どう思っただろうか?
私自身、多くの反省点を持ってこの本を読み進めた。
開業して6年目、未だ一人も職人を排出できずにいる、オーナーと
パン屋タルマーリーでのパン修業を卒業したという人間は未だいな
その理由もわかる。
私自身の問題だとはわかっていたが、それが再確認できた。
1人だけ、タルマーリーの製造現場で1年働き続けてくれた女性が
彼女の働きにより、パン屋も良くなっていった。
でも、まさにこれから!というとき、彼女は辞めてしまった。
残念だった。
しかし、彼女のおかげもあり、働く環境もよくなり、ここ最近は素
タルマーリー全体として、素晴らしい仕事ができるようになってき
これからはここで、良い職人が育っていく…そんな実感がある。
丁度そんなときに、この本に出会った。
人生には、丁度そんな時に出会う…というタイミングがある。
今、この本に出会ったことは、偶然ではなく、必然なのかもしれな
パン作りは建築に通じるモノがあるな・・・と思う。
パン作りをする人間として、建築から学ぶことは多い。
建築を追求していくと、先人たちの技にたどり着く…というのも、
そして驚くことに、最終的には環境問題による壁にぶち当たる…と
まさに、天然菌のパンを追求する私達が、原料の調達に四苦八苦し
ところで、伝統的な技の伝承の難しさを「宮大工」という世界で考
現代人は、学校教育を経て職業選択が増えたことや、簡単にお金を
また、機械や道具が発達したおかげで、加工された木だけを扱う安
食の世界にも、似たようなものを感じる。
しかし、それ以上に驚くことは、技が伝承されたとしても、寺社な
樹齢千年以上の木が生き残る環境が、今の日本にないのだという。
このような話を聞くと、「持続可能」とは何なのかと…考えてしま
戦後は、経済的な観点からの「持続可能」が追求された。
つまり、
「古臭いやり方は、食べていけないから廃れて無くなった=持続不
という論調が一般的になった。
確かに、この世から無くなってしまえば、持続可能とは言えない。
そういった意味で、昔からの職人的な仕事は、戦後から経済的に持
しかし、今でもゼロにはなっていない。
細々でもまだ続いているのだ。
そして、そういう仕事こそ、自然環境を守りながら確かに続いてい
「経済を含めた持続可能」が、「経済だけの持続可能」になり替わ
日本という国は、自然環境も含めて2000年近く続いてきた職人
ここから出る答え…。
自然環境を破壊してもなお、私達の生活は半永久的に持続していく
「持続可能」な仕事とは、最低でも、その周りの環境と共に何百年
これからの仕事は、経済的な観点だけでなく、「自然環境を含めた
だからこそ、自然環境を守ってきた昔からの仕事というモノを見直
職人、百姓…。
1000年単位で続いてきたやり方こそ、真の答えだと思うのだ。
1300年の技を伝承してきた宮大工が、「コンクリートよりヒノ
歴史の荒波を乗り越えてきたものだけが、「持続可能」を証明する
誤解のないように書いておくが、私は科学全般を否定するものでは
先人達の経験を自分のモノにしたうえで、より発達した機械や道具
それは「庶民の利益」につながるからである。
しかし、「企業の利益」のために、先人たちの知恵を皆殺しにして
宮大工は、何千年も前に建てられた建築を通して、古代の職人と対話するという。
そんなパン職人は、今の日本にどれくらいいるだろうか?
私も、古代の人々と会話できるパン職人になりたい。
「持続可能」を求めて、天然麹菌の採取について、掘り下げる。
室町時代に思いをはせ、古代人と対話する。
現在を未来に繋げる技が、過去から確実に伝えられているのだ。
こんな時代に、「技」は庶民にとって最後の武器だ。
そうして先月から、パン屋タルマーリーでは、丁稚という制度を見直し、研修制度をスタートさせた。
これからタルマーリーで研修したいと思う人々にも、ぜひこの本を読んでみてほしい。
「棟梁」 小川三夫・著 文春文庫






